生きてく強さ






 いくらあの男が人でなしだったとしても、腹黒で悪巧みしか頭にないヤツだったとしても、この墓はあんまりだろう。

「………………」

 さすがに言葉を失ったクラウドに、
「そいつはイリーナの飼ってたネズミの墓だぞっと。社長の墓はこっちだぞ、と」
 後ろからレノの声がかかる。

「あ、ああ、そうか」
 それはそうだろう。
 どれだけこの部下達に嫌われていたとしても、あんな墓を造られたら、あの男だって化けて出そうだ。
 そう思いながらレノの指す方を見る。
 そこにあったのは、簡素な石にただ「Rufus・Shin−Ra [τ]ελγ0085−[υ」ελγ0011」と刻まれた小さな石碑だった。

 うん。
 そうだよな。

 あんなヤツでも一応は人間だったんだから、このくらいの墓はあっても良いはずだ。
 神羅カンパニー最後の社長――
 このビルの廃墟、いや、ミッドガルの廃墟自体が、彼の墓標だと言ってもいい。






 彼が自分と同じ年令としだと知ったのはいつだったか。
 ずっと年上だと思いこんでいたが、そう思ってみれば確かに年相応の外見だった。
 この星の全土を支配したカンパニーを失って、それでもあいつはちっとも落胆していないように見えた。
 ――そうじゃない。
 もとから、あいつは何一つ持っていなかったからだ。

『神羅の血を終わらせるのが、私の義務だ』

 あいつの言葉を思い出す。
 これが、その答えだったのか?
 
 たった25年――
 短すぎると思うのは、俺たちの感傷か。
 こんなに早く逝ってしまうのなら、つまらない見栄であいつの願いを拒否したりするんじゃなかった。
「セフィロスの代わりだって、良かったじゃないか…」

「聞いたぞ」

 低い声が響いた。

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