「if…番外編」

エースから帰らなければならないことを告げられた。
最初から2年間だけの留学、という条件だったのだという。

戻ってはこないのか? たまには遊びに来たりとかしないのか? と訊いたら、エースは困った顔をしてオレを抱きしめた。

「未練が残る」

精一杯感情を抑えているようなその声を聞いたら、もう何も言えなかった。
オレだって、未練たらたらだよ。君を閉じ込めて、どこにも行かせないようにできたら、どんなに良いだろう。
そう言ったらエースは、
「僕もマキナとならいいかな。二人っきりで、朝から晩までいいことするんだ」
と笑って応えた。
オレだって、そうしたい…

「そうだ! じゃあ」
オレはすごくいいアイデアを思いついた。
「二人で旅行に行こう!」

エースは眼をぱちくりしてオレの顔を見つめ、それから嬉しそうに笑って「うん」と頷いた。


そういうわけで、チョコ牧場で借りたチョコボでぽくぽくと草原を歩いてる。なるべく大きいチョコボを借りたので、二人乗りだ。エースは軽いし。
ミッションではあちこち出かけたけど、なんの任務もない旅行なんて初めてだ。
どこに行こうかと二人でさんざん検討した結果、インスマ海岸のリゾートを目指すことにした。
そんな高級ホテル泊まる金がないというと、エースがそれは心配するなと言った。
エースに金を出させるなんてオレの男としてのプライドが、と一瞬思ったけど、エースだって男だしオレたちの関係は対等だ。いつもエースに女役を強いている分だけ、こんな時は素直に奢られるのがスジだろうと考え直した。
オレが「それはすごく嬉しい」というと、エースも嬉しそうだった。
 
インスマ海岸は年中暖かくて海が穏やかなリゾート地だ。
たまにでかいカメのモンスターが出たりもするけど、そんな事は滅多にない。
高級リゾートホテルが何軒も立ち並ぶ、オレたちみたいな子供には縁のない場所だ。本来は。
けどエースは、豪華なホテルのフロントでもまったく気後れすることもなくチェックインを済ませた。なんだか場違いな気がしてドキドキしてるオレとは大違いだ。
フロントのスタッフも、エースを大人の客みたいに扱った。
チョーク事件の時のクラサメと同じように、エースの自信たっぷりな態度に気圧されたんだろう。
オレたちはすんなり客室へ通された。
エースが手配した部屋は、これまた子供の二人連れには不似合いな二間続きの広々した部屋だった。
寝室の2面は全部ガラス窓になっていて、一面の海が見渡せる。
寮のベッドの3倍くらい広さのありそうなベッドが2台。
いったい一泊いくら位するのか、オレには想像もつかない。
なのに
「まあまあだな」
エースは部屋を見回してそんな事を言う。
君はいったい、いつもどんな生活をしてるんだ?
魔道院の寮の、質素な生活になんの不満もないようだったのが不思議なくらいだ。
オレたちを案内してきたボーイは、エースに深々と頭を下げて戻っていった。オレの方は見向きもせずに。
オレはエースのお供か護衛か何かと思われてるんだろうか?
そう思われても仕方ない雰囲気は確かにあったけど。

オレは荷物を投げ出すと、
「海へいくか?」
とエースに声をかけた。
「え?」
エースは振り向き、オレを見て目をしばたたいた。そして笑って、
「二人でずっといいことするんじゃないのか?」
と言ったのだ。
 
これまた海が見渡せる、大きな窓のある明るいバスルームでオレたちは互いの身体を洗いっこした。
明るい場所でエースの裸を見るのは初めてで、オレはそれだけで興奮した。
寮のシャーワールームでも見たことはあるけど、しげしげ見るのは憚られて、ちらちらっとしか見てなかった。
ナインなんかはじろじろ眺め回したあげく「ほっせぇなあ!」とか無遠慮なことを言って「ほっとけ!」とエースにどつかれてたけど。
部屋でエッチするときはいつも灯りを消して毛布に潜ってだったから、ほとんど顔も見えなかった。
エースが服を脱ぐ。
明るいところで見るエースの綺麗な顔。細い首筋。それなりに筋肉は付いているけど、それでもやっぱり薄い肩と細い腕。女の子の柔らかそうな腕とは違うシャープな細さだ。
滑らかな胸の桜色の乳首に眼が行くと、オレの指がその手触りを思い出して股間が熱くなった。
そんなオレにかまわず、エースはさっさとズボンと下着もまとめて脱ぎ、その辺に放った。
今度は小さな尻と金色の茂みから眼が放せない。
「なにやってんだよ、マキナ、君も早く脱げよ。それとも、脱がせて欲しい?」
笑いながらエースが手を伸ばす。
「いや、いい、いいから」
後じさるオレの、マントにも上衣も無視して、エースはいきなりベルトに手をかけた。
「ちょ、エースっ」
「マキナ、やる気満々だなあ」
布地が押し上げられていてジッパーが下ろしにくいらしく、エースは苦戦しながら笑う。
「そりゃ…君とこんなことしてて、平気でいられるわけがないよ。エース」
オレは相変わらずジッパーと格闘しているエースを抱きしめる。
「エース、大好きだ」
「僕も…マキナ」
裸のエースと、まだ服を着たままのオレとでキス。
いつの間にかエースのものもすっかり勃ちあがっていて、オレの太腿に擦りつけられる。
「やばい、エース、服の中にでそう」
オレが言うと、エースは笑って、
「早すぎ、マキナ」
と言いながら今度は上衣のボタンを外し始めた。

二人で湯船に浸かって、キスしたり触り合ったりした。
そんな事をしているウチにオレはエースに捕まれた拍子に湯の中でイってしまい、エースに
「はやっ」
と言われてしまったのだが、エースの裸を目の前に見せつけられて、そんなに我慢し続けられるわけがない。
「オレが倍イクくらいでちょうどいいだろ」
と負け惜しみを言ってみたら、
「3倍くらいかな」
なんてエースはオレに抱きついてキスしてくれた。

のぼせないうちにとバスルームを出てベッドへ移行した。
備え付けのバスローブはエースにはちょっと大きくて、袖が余っているのがなんとも可愛らしい。でもそんなこと言ったら気分を害するのはわかってるから、絶対口にしない。
ベッドは大きくて頑丈で、二人でダイブしても軋みもしなかった。
バスローブをはだけて、エースの胸に舌を這わす。それからもっと下へ。
勃ち上がったエースのものは、肌と同じく薄い色で先も綺麗なピンクだ。その先端から透明な雫が一筋伝う。
「興奮してる? エース」
「決まってるじゃないか」
そう言ってエースはオレの頬に手を伸ばした。
「綺麗な色だ。マキナの瞳…」
綺麗なんて言われたのは初めてだ。
「大好きだ、マキナ」
腕が首に回されて、キス。エースのキスはとろけるように甘くて熱くて、いやらしい。舌を絡め、互いの口の中を舐め合う。
口唇が離れると、エースは「はぁ」と吐息を零した。そんな様子が、たまらなく色っぽい。
 
「エース、君を全部見せて」
「うん」
オレがローションを手に取ると、エースは自分で脚を抱えて開いた。
オレはその光景だけでくらくらする。
初めて見るエースの茂みの奥。
ほんとに小さな、すぼまった穴だ。
こんなところにオレのものが入るなんて、信じられない。
何度も突っ込んでおいて今更だけど、実際目の当たりにすると驚く。
もちろん、そんな冷静な観察なんて出来てたわけじゃない。それはむしろ頭の隅をちらっと走って行ったことで、オレはもう、むやみやたらに興奮してた。
エースとこういうことをするようになってから―――この小さな入り口からエースの中へ入り込むようになってからさえ、もう結構な回数をこなしてるのに、自分の眼ではっきりとそこを見ることがこんなにインパクトがあるなんて。
男は視覚で興奮する動物だ、って誰かが言ってたけど、その通りだと思う。
エース自身の手で開かれた脚。勃ち上がったエースのものと金色の柔らかな茂み。その奥まで丸見えの姿勢。さすがに恥ずかしいのか、伏せられた瞳、上気した頬。
なんだかもう、それを見てるだけでオレは暴発しそうだ。
「マキナ」
エースの声に我に返る。
「…早く」
ああもう、どうしてそんな顔でそんな事言ってくれちゃうかな!?
オレは胸の中で暴れる気持ちの持って行き場が無くて、ここまで来たにもかかわらずいきなりエースを抱きしめる。当然二人でシーツの上にひっくり返った。
「わっ…」
びっくりしているエースの薄い背を抱きしめてキス。
エースは少し戸惑ってたけど、すぐ熱いキスを返してくれた。
「エース、好きだ、大好きだ」
「うん」

帰らないでくれ。ずっとオレと一緒にいてくれ。

そう言いたくて胸が詰まった。

「マキナ…」
エースはそんなオレの気持ちなんかきっと全部お見通しだ。
「やっぱり顔が見えるって良いな。君ってとってもいい男だ。この…身体もすごくいい」
そう言って、オレの頬を撫で、胸をなぞる。
「君の顔を見ながら…したい」
「エース」
オレはまたまた暴走しそうになる自分をなんとか抑えつつ、エースの脚を割り開いた。こんなにいちいち過剰反応してたら、いつまで経ってもホンバンにたどり着けない。
何度もエースが誘ってくれているのに、情けないったらないだろ、オレ!
でもオレの眼はエースのそこに釘付けで、ごくり、と喉が鳴った。
「そんなに見るなよ、マキナ。恥ずかしいだろ」
言われてしまった。
「あ、ああ、ゴメン。だって、なんかもう、すごく新鮮って言うか、インパクトありすぎて」
エースが笑う気配。
「マキナに見られるのは嫌じゃないけど…でも、早く欲しいんだ」
「うん」
オレはローションを手に取り、そっとエースのそこに塗りつける。そのままゆっくり指を挿れてみた。
「んっ…」
エースがぴくりと身体を震わせる。そんな様子もものすごく色っぽい。色っぽいっていうのがどういうことか、オレはエースとセックスするようになって初めて知った。それはもう、股間を直撃するような感覚なんだ。
オレはエースの中に入れた指をゆっり進ませる。
いつもの手順だけど、それが見えてるってのは大違いだ。
エースの小さな穴がオレの指を飲み込んでく。
オレは指を2本に増やし、明るい鳶色のそこに流し込むようにローションを塗りつけた。
指を中で動かすと、またエースの喉から甘い声がもれる。
柔らかくてきついその入り口の感触は今まで何度も味わったものなのに、見えているだけでこんなにも違う。
きゅうっと縮まってオレの指を締め付けるかと思うと、柔らかく緩んで内側のピンク色の粘膜が覗く。
「マキナ、もう…っ」
見とれているオレをエースの声が急かす。
指を引き抜き、自分のモノをあてがった。
それでもやっぱり本当に入るんだろうかなんて思ってしまう。
「行くよ、エース」
「ん…」
身体を進めると、いつも通りエースのそこがオレを飲み込んでいく。
でもそれを眼で見てると、全然別のことのようだ。はらはらするし、それ以上に興奮する。
襞が拡がってぴんと張り詰める様子が痛々しくて厭らしい。
エースが軽く息を吐くと、これ以上ないほど堅く反り返ったオレの先端がぬぷりと入りこんだ。

「あっ」
「え?」

しまった、黙ってれば分からなかったかもしれないのに。
と思うけどもう遅い。
オレはまだ半分も入ってないのにエースの中にぶちまけてしまい、思わず声を上げてしまったのだ。
エースの途惑ったような顔を見ながら、
「なんでもない!」
と誤魔化してエースの腰を抱き、一気に残りの部分を埋め込んだ。

「ああっ」
エースは衝撃に身体を仰けぞらす。
ごめん、エース、ちょっと乱暴だったよな。でも今からちゃんとやるから。
「マキ、ナ…」
中でびくびくするオレのものの感触で、きっとエースにはこの失敗はバレてるだろう。
射精した後のオレをエースの中がやわやわと締め付ける。
サイコーに気持ちいい。

「タフだなあ」
呆れたような、でも優しいエースの声がオレの耳元で囁く。
その声を聞いたら、オレのはますます力を増した。
「抜かず100発ってやつだ」
「100発は無理だろ」
「エースとならできそうな気がする」
「ホントにやりそうなのが怖い。無理なのは僕の方だって」
そう言ってエースは笑った。
 
今度こそゆっくりと、もうよく知ってるエースのいいところを擦り上げるように動く。
オレの放ったものとローションが溢れてきて濡れた音を立てる。
エースは切なげに眉を寄せて、甘い声を洩らした。
そんな顔を見てたら、またたまらない。
「エース!」
思わず抱きしめて、抱え上げる。エースがオレの脚の上に乗っかるような体勢になった。
「あぁっ」
結合が深くなり、オレの身体とエースの身体が密着する。
「マキナ…っ」
エースの腕がオレの頭を抱きしめた。
オレはそのままエースの中を突き上げる。結構きつい体勢だけど、そのくらいのハンデがないとまたいっちまいそうだから丁度いい。
「ああ…マキナ…はっ、ああ、いいっ」
エースは囈言のように声をこぼしながら、オレの腹に自分のものを擦りつけるようにする。
オレは意識してエースのいいところを擦り上げるように集中した。
「あ、マキナッ、ああぁっ」
エースは高い声を上げてオレにしがみつき、、そのまだ触ってもいないエース自身から熱いものが迸った。

早い。
いつもよりずっと。

エースも興奮してたんだ、と思うとすごく嬉しかった。
「エース…」
オレをぎゅうっと抱きしめたまま荒い息をついている背をそっと撫でる。
「顔、見せて」
エースはオレの肩から顔を上げ、薄く笑った。快楽の余韻が残る蕩けたような笑顔に、オレのものがエースの中でびくんと力を増した。
「あっ、あぁ」
仰けぞる顎を捉えて引き寄せ口唇を重ねると、熱い舌が絡んでくる。
エースのそれもまだ力を失わず、オレの腹に当たってる。
「好きだ、エース、すごくいい」
「僕も。君とするセックスは、最高だよ。君に会うまで、セックスがこんなにいいなんて知らなかった。君のが中に入ってるって思うだけでたまらない」

すごい殺し文句だ。エース。
君ってほんとに、どこまでが天然なんだか分からない。

「やっぱり、抜かず100発確定だ」
オレは宣言して、また動き始めた。


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