生きてく強さ


















 重い――


 それに、擽ったい。

 目を開けると、記憶にある天井が見えた。
 そして、それより近くにこれまた記憶にある顔。

「おまえーーーーーっ」

 叫んで起き上がろうとしたが、相手が腹の上に乗っていたので上手くいかなかった。
 しかもそいつはせっせとクラウドの服をはだけており、そいつ自身もすでに半裸だ。
 そしてゆっくりと唇の端を吊り上げて悪辣な笑みを浮かべてみせた。

「今日は私の好きなやり方で楽しませてくれるんだろう?」




「俺をだましたな!」
「ちょっとしたお芝居だよ、クラウド。楽しめたろう?」
「ひとを馬鹿にして…!」
「そうじゃない、クラウド。私はおまえが欲しいんだ。そのためなら、なんでもやるさ」
 憤っていたはずの、その怒りが空回りするのをクラウドは感じる。あまりの怒りとばかばかしさに、返って冷静になってしまったようだ。
 桜色の口唇が近づいてクラウドの頬をかすめる。
 ついばむような口付け。
 優しく、愛おしむように、触れては離れていくキス。
 こんな体勢なのに、すでに相手のペースに載せられてしまっていることをクラウドは自覚する。
 まったく、人をコントロールすることに関しては超一流だ。
 それでこその神羅社長というものなのかもしれないが、はた迷惑な事この上ない。
 それでも、一時でも自分の心に湧いたあのやりきれない喪失感を思えば、偉そうにセックスをねだるコイツを見る方がずっといい。
 クラウドはルーファウスの腕を捉えて体勢を入れ替える。
「人をだましたり嘘をついたりしちゃいけないと教わらなかったのか」
「誰に? あの父親にか?」
 クラウドは一瞬詰る。
 その隙を逃さず、ルーファウスはたたみかけた。
「私が教わったのは、欲しいものはどんな手段を講じても手に入れよ、ということだけだな」
 そう言いながらルーファウスは腕を伸ばし、クラウドを引き寄せてキスをねだった。
 

end
 


口唇