続きの2 ルーファウスは嘘を言っている。 「ちょ、ちょっと待て、ツォン…」 掠れた声で、ルーファウスが言った。 しかも片手はツォンの胸を押しのけるように突っ張っている。 いましも彼の片足を抱え上げ、いざ突入という体勢なのにである。 「何か問題でも?」 それでも部下根性が染みついたツォンは、律儀に聞き返した。 「う…、いや、その…」 ルーファウスが何を言い淀んでいるのか、ツォンには謎だ。 ここはツォンの部屋である。 結局他に適当な場所を思いつかなかったのだ。とりあえずセキュリティだけは確保出来る。 地味で簡素な部屋だったが、招き入れられたルーファウスは楽しそうだった。 キスを交わしシャワーを浴び、彼の身体を隅々まで愛撫して、特にその場所は丁寧に潤滑剤でほぐした。 ルーファウスは一切拒みはしなかったが、恥じらうそぶりや、くすぐったがって身体をよじる様も初々しく、演技なのか素なのか謎でもツォンには好ましく感じられた。 売春同然のことを強いられていたとはとても思えない。 ツォンの背に回される腕、重ねた口唇絡められる舌、甘い吐息。 この方とこんな事になろうとは考えてもいなかったが、こうしてみればずっと以前から自分はこの人が好きだったのかもしれない。 どうせ他の男に汚された身体なら―――などと思ったわけではないが、ハードルが低くなったのは事実だ。 この先もまたきっと同じ事が繰り返されるのなら、互いを愛しく思う相手とのセックスは彼にとって決してマイナスにはならないだろう。 自分がそれを与えられるなら機会を逃してはいけないと、そう思った。 そして、いよいよという場面である。 ツォンの方ももう余裕がない。 彼の中を目前にして、猛るものを押さえるのが精一杯だ。内股の白い肌。金色の茂みから屹立する彼のそれと、その陰に隠された小さな入り口。 ごくり、と喉が鳴り、思わず力が入ってしまう。 その拍子に先端が彼の中に入り込んだ。十分に濡らされほぐされたそこは、驚くほどスムーズにツォンを受け入れた。 「あっっ」 ルーファウスは高い声を発して身体をのけぞらせた。 「ま、て、待てって言ってるだろう!」 必死で言葉を紡ぐが、ツォンの耳に届いているかは謎だ。 「やめ、ああああっ」 一気に奥まで貫かれ、ルーファウスは悲鳴を上げてもがきツォンを引きはがそうと腕を突っ張った。 だがそんな抵抗は無きに等しい。圧倒的な力の差に、ルーファウスは目の前が暗くなるような気がした。 押し込まれたものを揺すられ、痛みと圧迫感で息もできない。 「っ、ツォン!」 名を呼んだのは失敗だった。 ツォンのモノはルーファウスの中でいっそう大きさを増し、それが激しく身体を突き上げる。 後はもう言葉にならず、ルーファウスはただ喘ぎ悲鳴を上げ続けた。 気づくと、ツォンが真上からルーファウスの顔をのぞき込んでいた。 「大丈夫ですか」 ツォンの声も大概掠れている。 「大丈夫に見えるか」 必死の抵抗に疲れ切り、腕も上がらない。 「すみません、少々とばしすぎました」 少々か!? 状況から見るに一度は達したのであろうが、ツォンのものはまだルーファウスの中で力を失っていない。 「もういちど、よろしいでしょうか」 よろしくない! ルーファウスは首を振る。 「まだ貴方をいかせて差し上げていません」 もういいから! 「…もう十分だ」 精一杯冷静に聞こえるよう言ったつもりだ。 だが―――― 「ルーファウス様」 繋がったままキスを落とされる。 身体の中で動くものがあちこちを抉ってルーファウスは呻いた。 「やはりあれは嘘ですか?」 ツォンに見つめられて、ルーファウスは目を逸らす。 多少なりとも後ろめたい気持ちはあった。 ここまでされていてまだそう思う自分はどうなんだ、とも思ったが。 「嘘…じゃない。ただ…」 「ただ、なんでしょうか」 「ホンバンは…したことがなかった」 はあ!? 思いもかけぬ告白に、ツォンの目が丸くなる しかもいきなりホンバンなどという下品な単語がこの可愛らしい口から出たことも衝撃だ。 「いつも、ギリギリでヴェルドが来て相手を脅すことになってるんだ」 なんですと!? 「親子して美人局ですか!?」 しかもヴェルド主任までぐるだと!? ショックでぐらぐらする。 ついでに下半身も力を失い、ルーファウスはほっと息をつく。 「美人局…そうも言えるが…。そもそも神羅カンパニーの次期社長とそんなに簡単にやれると思う方が馬鹿だ。そういう馬鹿しか引っかけていない」 「では録画というのは」 「だからその、前戯とか、あと口で…とか。どうせ強制猥褻しか成立しないからそれで十分なんだ」 口!? 許し難い! それは確かに肉体的なダメージは小さいかもしれないが、この方の口に穢れたものを入れるなど… 想像するだけでくらくらするような光景だ。 「ツォン…」 ルーファウスの眉が胡乱げに顰められる。 「…まだ何かあるのですか」 詰問口調になってしまったが、言い直す余裕もない。 ルーファウスはますます顔をしかめ、ツォンを指さした。 「鼻血」 End(爆) |