「まだ他に何か、おありですか。わたくしを拒む理由が?」
はっきりとそう言われて、ルーファウスは途惑う。
「いや…なにも、ない」
口ではそう言いながら、それが本当ではないと、自分でも分かっている。そしてツォンがそれに気づかぬはずがないことも。
頬に触れるツォンの手を押さえる。大きく、温かな手。
この手が――

この手があの女を殴った――

はっ、とルーファウスの瞳が見開かれた。
ようやく分かった。
自分の心の中の、初めて気づく感情。
これが、
嫉妬というものなのか。

「ルーファウスさま?」
そんなルーファウスの心の内までは、ツォンには分からない。
「ツォン」
ルーファウスは顔を上げ、ツォンを見つめる。そして微かに笑った。
途惑うツォンの肩に腕を回し、耳元に口を寄せる。

「ツォン…私は、思っていたよりずっとおまえのことが好きらしい」

ツォンの腕が上がって、ルーファウスの腰を抱いた。
「どういう経緯でそのような結論に至られたのかは存知ませんが…」
ルーファウスの軽い身体を抱え上げるようにして正面に向ける。
「そのお言葉、倍にしてお返ししましょう。わたくしこそ、誰よりも何よりも、貴方を愛しています…ルーファウス」
熱い口付けと共に囁かれた言葉に、ルーファウスは歓喜する。

そうだ。
この男は私のものだ。
この腕も、この胸も、その命も、全部。
どれ一つだって、他人にはくれてやらない。
すべて、
私だけのものだ。
私のことだけ、考えていろ。
あんな女のことなど、かけらも浮かばぬように――

忙しなくその場で服を解き、二人は肌を合わせる。
脚を開き、ツォンを迎え入れる喜悦に、ルーファウスは身体を震わせ声を上げる。
その姿を見、その身体の熱を感じることに、ツォンもまた言いしれぬ悦びを感じる。

貴方に従い、貴方の望みを遂行することが、私の生きる意味です。
神羅の犬と呼ばれることすら、私の誇りだ。

ツォンの身体にまとわりつく、血と硝煙の臭いが二人の欲望を煽る。
ツォンの高まりを身の裡に感じ、ルーファウスもまた絶頂へ駆け上がる。

二人の命を賭したゲームが始まる――その予感を互いの胸に秘めながら。

END