Will be KIng ギャグなおまけ



「で、なんで貴方がここにいるんですか」
「夜這いだ」
ツォンの腹の上に乗り上げながら、ルーファウスは肩をそびやかして言い放った。
「よば…って! 確かに夜ですが、なにか間違ってませんか」
「これからすることを考えたら、正しい用法だと思うが?」
「(ちがう、絶対違う…)それはともかく、まさか一人でここまで来られたんじゃ…」
「ちゃんと護衛は付けてきた」
「いや…それもどうかと…」
「いちいち喧しい男だな、彼女は見て見ぬ振りくらいできる」
「ちょ、社長! 彼女って、来たのはイリーナですか!?」
「いや、フェリシアだ」
「フェ…えええっっ」

ツォンの泊まるホテルの一室である。
ルーファウスが使うような高級ホテルではなく、街の安宿だ。それでも一応シャワーの湯くらいはふんだんに出た。そのシャワーを使って一日の汚れを落とし、そろそろ就寝、と思った矢先の急襲である。
ベッドはシングルで狭い上に二人分の体重を受けてぎしぎし轢んだ。このままここでことに及べば、真下と左右の部屋には何をしているかばればれだ。
「はっ、まさかフェリシアさんは隣の部屋にいるんじゃあ…」
「当然だ。護衛だからな」
「しゃ、社長はフェリシアさんにプロポーズなさったと…聞き及んでいますが」
「そんな事を言ったのはイリーナか? 正確にはプロポーズしたのはヴェルドにだ」
「はああ!? ヴェルド主任に? そんな…いくら主任が寡夫だからといってまさかOKしたりは」
「おまえ、一人でいるうちに頭に虫でも湧いたか。『父親』に結婚の申し込みをしたんだ。ごく真っ当だろうが」
「あ、ああ、そうでしたか。なるほど…って、やっぱり納得できませんよ! それでどうしてこういう状況になるんですか!?」
「まあ安心しろ。ヴェルドはともかく、フェリシアには他に相手がいる」
話しながらもルーファウスの手はせっせとツォンの衣服を剥がしている。
「え、そ、そうなんですか」
「レジェンド…とかいうヤツだ」
「あの女たらし…ですか」
「ふん。そのくらいの男でないと、彼女を受け止めることはできんだろう。彼女の方も、いろいろあったからな。真っ直ぐ気持ちをぶつけられたら、退いてしまうだろう」
「確かに…そうかもしれませんね」
「おまえもな。むっつりスケベもここまで来ると国宝級だ」
「誰がむっつり…うわ、社長!」
ツォンがフェリシアのことを思いちょっとした感傷に囚われている間に、ルーファウスはツォンの服をはだけ終わり、引きだしたものを口に含んだのだ。
「社長、だめです…っ」
肩に手を置いて、無理矢理引き剥がす。
「なにが社長だ、不粋な男だ。こんな場面で役職名を呼ぶヤツがあるか。それともそういう趣味に宗旨替えしたのか」
「そうではなくて!」
ルーファウスに喋らせておいたら、いいように丸め込まれてしまう。その話術はまさに天才、向かう所敵無しなのだ。
「わたくしは社長のお側近くにお仕えすることはご辞退したのです」
「だからなんだ。それはタークスとして、という話だったろう」
「わたくしはタークスです」
「だから、名を呼べと言っている。ベッドの中では、私はただのルーファウスでおまえはただのツォンだ。社長でも部下でもない」
(そういう屁理屈ですかーーー!)
と、心の叫びは
「うっ」
という呻きにかき消された。もちろん、再び急所をぱくりと咥えられたからである。それもかなり強烈に。
ツォンの理性も抵抗も、ルーファウスの行為に押し流されていく。
滑らかな裸の身体を腕に抱けば、もう、後は一直線だ。

そうして二人は、夜が白むまで互いを貪りあい、左隣の部屋と、真下の部屋の宿泊者は、眠れぬ夜を過ごすこととなった。
右隣のフェリシアはといえば、ツォンの腕の中にいる社長を護衛する必要などさらさらない、というわけでぐっすり熟睡なのであった。

おわり