ビデオ1




「さて、社長」
ミュッテンは石の床に座ったままのルーファウスを見下ろしながら、その周囲をゆっくりと歩いた。まるで肉食獣が獲物の様子を伺うように。いや、獲物と言うより逃げるすべを奪われた単なるエサだ。
「アタマのいいあんたのことだ。この部屋がどんな目的で使われるものか、とっくに気づいてるだろう?」
「………」
「だんまりか。さっきまでとは大違いだな」
「何を話せと? 復興計画のプランは話せても、あいにくあなたの性的嗜好については語るものがない」
「いいお返事だ」
そう言ってミュッテンはルーファウスの胸を脚で蹴った。
「…っつ!」
まともに蹴りを食らったルーファウスは、石の床に倒れ込む。肋骨を固定したコルセットのせいで受け身をとることもできず、後頭部を打ち付けた。一瞬意識が遠くなる。
「お楽しみだ、社長。おれの『性的嗜好』とやらについては、直接あんたの身体に教えてやろう」

衣服を剥がされ、コルセットさえも乱暴にむしり取られた。
「綺麗な肌だな、社長。男とは思えん。コスタあたりで遊びまくってるってウワサもあったが、陽に当たったことも無さそうだ」
ずきずきと痛む肋骨のせいで、息をするのもままならない。
「社長、あんたはずいぶん謎の多い人物だったよな。おれ達が聞くのはウワサばかりで、ここ何年も誰もあんたの顔を見てない。おれはまだ子供の頃のあんたしか覚えてないが…」
ミュッテンはルーファウスの胸に手を這わせる。
「大人のあんたも悪くない」
薄汚い欲望が吹き出してくるような醜悪な笑いに顔を歪め覗き込んでくる顔を、ルーファウスは真っ直ぐ見返した。

「こんなことはとっくに経験済みか?」
いきなり局部を握られ、ルーファウスの身体がびくりと跳ねる。
「ウワサはいろいろあったよなあ。副社長の仕事は枕営業だとか、英雄さまの愛人だとか、あの父親とも寝てるとか」
やわやわと性器を弄ぶ手が、もっと下へと伸びてくる。
「この身体に聞けばわかるかな?」
緊張し、強張ったルーファウスの身体からミュッテンはすっと手を放した。
「心配するな、社長。最初は優しく可愛がってやるよ。家畜には飴と鞭が必要だからな。おれが飼い主だと分からせてやる」
楽しげに言いながら、ミュッテンはルーファウスの両手を括り、天井から下がった鎖に繋いだ。
丁度膝を付くくらいの高さで腕と足の鎖の長さを調節すると、膝で這って尻を突き出した格好になった。ほとんど身動きできない。片脚は拘束されていないが、踵を骨折しギプスを嵌められた足は自由には動かせなかった。しかも吊られた腕にかかる体重のせいで、折れた肋骨から酷い痛みが湧いてくる。

「いい格好だ、社長。素晴らしく綺麗で厭らしい。これでそそられない男は、よほどのホモ恐怖症かよほどの馬鹿だ」
ミュッテンは手に取ったボトルから、潤滑剤を大量にルーファウスの下肢の間に滴らせた。
むき出しにされたアナルに指を掛け、拡げて中へ流し込む。
「…っ、く」
異物感に身体を捩ると肋骨が痛み、ルーファウスは呻いた。

「まずはあんたを味わってみないとな」
振り向くことのできないルーファウスは、背後でミュッテンが何をしようとしているのかは見えない。だが微かな金属音と衣擦れで、次に起こることは推察できた。

「っ、あっ」
分かっていても、衝撃に耐えきれなかった。力を抜いて受け入れるのが一番楽だと知っているのに、身体は勝手に強ばり、そのせいでまた胸が痛む。
「、っは、はぁっ」
ミュッテンは一気に己をルーファウスに押し込んだ。根本まで入り込んだモノを軽く揺する。そしてゆっくりと引出し、また勢いを付けて貫いた。
「くっぅ」
殺しきれなかった声が、こぼれ落ちる。
「へえ、あんた相当慣れてるな」
濡れた音を立ててミュッテンのモノが出入りする。ルーファウスはその音も声も聞くまいとするかのように頭を垂れて目を瞑っている。
「ウワサはウワサじゃなかったってことか。まあ、それならそれなりに楽しめる。ってもんだ…なかなかいい具合じゃないか…誰に仕込まれた? あの父親か?」
最初の衝撃が過ぎると、ルーファウスの身体は行為を受け入れ始めた。擦られる入り口も、突き上げられる内部も、慣れた感覚が支配して快感を呼び覚ます。
僅かに勃ち上がりかけたルーファウスのそれに気づいて、ミュッテンは下卑た笑い声を上げた。
「悦びすぎだ、社長。こんなふうに犯されて感じるなんて、あんたいったいどういう育ち方をしたんだ」
ルーファウスは答えない。ただ、荒い息と濡れた肉のぶつかる音だけが部屋に満ちる。
「ウシロだけでもイケるのか? …とんだ淫乱だな」
ルーファウスを嬲るミュッテンの声もすでに余裕がない。
「イッてみせろ、社長」
激しく腰を打ち付けながら、ルーファウスのそれに手を伸ばして握り込む。
突然の刺戟に、身体が跳ねる。同時に中が収縮し、締め付けられたミュッテンはたまらず射精した。

ミュッテンが抜け出すと、開いたままの孔から精液が滴り落ちた。
右手を開いてみると、そこもルーファウスの放ったもので濡れている。
ミュッテンは声を立てて笑った。
「ずいぶんよかったようだな、社長…」
前に回り込み、頑なに顔を伏せているルーファウスの髪を掴んで上向かせる。その口元に右手を突きつけた。
「綺麗にしろ。あんたが汚したんだ」
ルーファウスは目を閉じたまま、口を開いた。
薄い舌が器用にミュッテンの手を舐める。
まったく抵抗しようとしなかったことに、ミュッテンは軽い驚きを感じた。
一瞬失望を感じるかと思ったが、それは無かった。むしろ、この男に対してますます興味が湧いた。
従順になったわけでも、媚ているわけでもないだろう。それはわかる。
仮にも神羅社長だった男だ。そう簡単に落ちるはずもない。
「おい、社長。何を考えてる」
掴んだ髪をぐいと引くと、伏せられていた瞳が開いた。

蒼く透き通った瞳に浮かぶ表情は、ミュッテンが見たこともないものだった。


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