ビデオ2


天井から下がった鎖に、足がようやく床に着くくらいの高さで腕を吊られたルーファウスの胸を、ミュッテンは短い鞭で叩いた。
鋭く風を切る音と共に皮膚が裂ける。
ひうっとルーファウスの喉から空気の洩れるような声がこぼれた。悲鳴を上げる力もないのだろう、項垂れた顔も上がらない。
そうやって付けられた傷が幾つも胸から腹にかけて血を流している。
腕にかかる体重を少しでも減らそうと脚に力を入れようとしては失敗しているのか、がくりと身体が下がる。そのたびに苦痛の呻きが上がった。

「神羅社長にも赤い血が流れているんだなんて、愚民どもは信じないかもな」
ルーファウスの胸に手を這わせ、傷から血をぬぐい取ってそれを口に含む。
「ごく普通の味だ」
「あたりまえだ。…オイルでも流れていると思ったか」
掠れた声で返答があり、ミュッテンは驚きを感じる。まだ軽口を叩く余裕があるとは。
「魔晄とかな」
「ライフストリームは、この星に生きるもの全ての身体に流れている」
神羅社長とも思えぬ正論だ。
「あんたが魔晄で動く人形だったとしても、誰も不思議に思わないってことさ。実際そんな噂もあったくらいだ。この綺麗すぎる顔のせいで」
鞭の持ち手でルーファウスの顎を上げる。
ミュッテンを見るその目には、相変わらず理解しがたい光がある。
「子供の頃のあんたは、それこそ人形みたいだったな。喋らない、動かない。いつも黙ってプレジデントの後に立ってた」
ミュッテンはゆっくりとルーファウスの背後に回り込む。
「なあ、あの父親ともやってたんだろう? いつ頃からだ? もしかしてうんと小さいときからか?」
言いながら、ルーファウスの身体に挿し込まれていた器具を乱暴に引き抜いた。
「はっ、くぅっ」
びくりと身体を引き攣らせ、ルーファウスが呻く。
「よっぽど上手く仕込まれたか、もともとそういう性質だったのか…。これじゃあ突っ込まれないとイケないんじゃないのか」
下卑た笑い声と共に、ミュッテン自身が器具の代わりに入りこんでくる。
「ゆるいな…少し締めろよ」
笑いながらルーファウスの胸に回した手で、傷を抉る。
「うっ、く」
呻きと共に身体が引き攣る。
「いい調子だ」
この男は痛いとも苦しいとも言わないが、呻きと喘ぎは素晴らしい。この中の具合も。
こんな獲物は二度と手に入らないだろう。なにしろ世界に君臨した神羅社長だ。
存分に楽しまなくては。
凌辱の場面を録画しているカメラに向かい、ミュッテンは歯をむき出して笑った。


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