ビデオ3


その手に握られていたのは、レノが得意とする武器電磁ロッド―――の、一種だった。軍に支給される一般品で、タークスが使うものに比べると遥かに廉価で機能の低いものだ。人を殺傷するほどの威力はなく、せいぜい昏倒させるくらいのパワーしかない。だが強く押し当てれば火傷するし、電気ショックによる痛みも激しい。
楽しげにそれをルーファウスの前で振り回してみせるミュッテンは、すでに欲望を膨らませているのが、着衣越しでもはっきりと分かる。

「どこに欲しい? 社長」
ルーファウスが反射的に脚を縮めると、じゃらりと鎖が鳴った。
「逃げたいか? そうか。やっぱり縛って欲しいんだな」
ミュッテンは一度ロッドを置くと、手早くルーファウスの両手を拘束して天井から下がる鎖に掛けた。
そうして改めて武器を手に取る。
チチッと小さな火花がその先端から散った。
ルーファウスは目を見開き、黙ってそれを見つめている。口を開こうとはしないが、速くなる呼吸が彼の緊張を伝えている。ミュッテンは暗い愉悦に顔を歪めた。
「どのくらいの強さがお好みかな、社長。あんたの手下どもがよく使う武器だ。お気に入りだろう?」
近づけられただけで、びりびりと痺れるような痛みが皮膚に走った。ルーファウスは目を閉じて唇を噛む。

「最初はこれくらいか?」

「っ、はっあぁっ!」
バチッと電撃の走る音とルーファウスの押し殺した悲鳴が響き、肉の焦げる匂いが漂った。
「どんな具合かな?」
電磁を切ったロッドの先で、俯いて震えているルーファウスの顎を上げる。
まだ痙攣の治まらない身体はこわばり、声もろくに出ない様子だ。
「ちょっと強すぎたか」
ロッドを押し当てられた内股には、抉れたような火傷の跡が残って、微かに異臭を放っていた。
「これを挿れたら、一発で昇天できそうだなあ、社長?」
笑いながら鎖の長さを調節し、膝の付く高さまで下げる。ルーファウスを犯すときの、お気に入りの体勢だった。腕を吊ることで折れた肋骨に力がかかり、それだけで間断無い苦痛を与えられる。
荒い息を吐いて身体に残る痛みに耐えるだけで精一杯なのか、その口からは小さな呻き声しか洩れてこない。
「もっと叫んでくれないか。あんたの悲鳴が聞きたいんだ」
耳元に囁き、ロッドの先端を背後から身体に押し込む。

「あああっ」
やっと高い声が上がった。
たまらない。この声を聞くと、ぞくぞくする。ミュッテンはゆっくりとロッドを出し入れしながら、自分の幸運を噛み締める。
神羅社長、あんたは確かに最高の逸材だ。
若くて綺麗で、頭が良くて育ちが良くて、誰よりもプライドが高い。
そのプライドを叩き折って、おれに跪かせるんだ。こんなやりがいのあることはない。
それに、あんたを手に入れることは神羅を手に入れることだ。
あんたの手下どもは今頃必死になってあんたを捜してるだろう。軍の上層部も、あんたが生きてることは知ってる。アタマの固いあいつらは、あんたの命令無しではなかなか動かない。
世界もカンパニーもぼろぼろのがたがただからこそ、最後まで命令系統にこだわる。それが軍隊ってもんだ。
あんた意外と人望があったんだな。
おれは何度もあんたを見たことがあるが、それはいつも式典とかパレードとかでだ。あんたは遠い段の上で、黙って立ってた。
前の社長の横にいた頃の、まだ子供のあんたはホントに人形みたいだった。今思えばおれは、あんたを見た後興奮して、その頃ここに飼ってた奴隷を半殺しにしたことがあったな。スラムで拾ってきた餓鬼だったが、あんたとは比べものにならない。
当然だ。
あんたは有り余る金を湯水のように使って磨き上げられた人形だ。それも最高級のセックスドール。
そうか。
あんた軍の上の連中とも、ヤってたのか?
ありそうな話だな。
英雄様の愛人だってのは有名なウワサだったが。

「っ、は、あぁ」
執拗にロッドで内部を責め立てこね回すと、僅かにルーファウスのモノが反応を示してきた。苦痛だけでなく色を佩びた呻きがこぼれる。
「どんだけ淫乱なんだ、社長。こんなのがいいのか?」
「…くっ」
深々と突き立てられて、ルーファウスの背が撓る。
「こんなに咥え込んで…。このまま電撃を食らわせてやろうか」
耳元に囁くと、びくりと大袈裟なくらい身体が竦んだ。
「可愛いな。怖いか? 社長」
返事はない。
ルーファウスはいたぶられていてもほとんど口をきかない。
最初のうちは。
普段の饒舌が嘘のように、固く口を閉じて声を出すことすら拒んでいるのだ。
「安心しろ、社長。失神されてもつまらんし、死なれちゃもっと困るからな。まだまだお楽しみはこれからだ」
ミュッテンはロッドをずるずると引出す。ルーファウスがほっと息を吐いた。
だが再びロッドの先が緩んだ部分に押し当てられ、軽く挿入されてルーファウスの身体に緊張が走る。
「さすがアタマがいいと反応が違うな。ご期待通りにしてやろうじゃないか」
ミュッテンは手元のスイッチに指を掛ける。

「や、あああああっ」
言いさしたルーファウスの言葉は、悲鳴に呑み込まれた。
「はっ、あぁ、う…」
びくびくと痙攣し苦痛にもがくルーファウスを、ミュッテンは食い入るように見つめている。
レベルを最小に絞っても、敏感な粘膜への電撃は激しいショックだろう。その部分は赤く爛れ、漿液を滴らせている。
腕を吊られ脚を鎖に拘束されて、最低限しか動くことのできない身体を捩り、なんとか少しでも苦痛の少ない姿勢を取ろうとルーファウスは無駄な努力を続けている。だがそれはむき出しにされミュッテンの目の前に曝された部分をより拡げてみせることになった。
「そんなに尻を振って、誘ってるつもりなのかな?」
興奮に掠れた声で言いながら、ミュッテンはロッドを置き、はち切れそうになっている己のモノを引き出した。

「さあ社長、お待ちかねのお楽しみだ」

突き立てられたモノが爛れた粘膜を擦って出入りするたびに、悲鳴が上がる。
もう、ルーファウスは声を殺そうとはしなかった。
あえぎ、もがき、切れ切れの悲鳴を放ちながら逃れようとする身体を押さえつけ、背筋に舌を這わせる。
食いつきたくなるような肌だ。
ミュッテンの刻んだ傷が幾つも無惨な痕を晒しているが、それでも食い千切ってみたくなるような滑らかで白い肌だった。いつかそうしてみよう、とミュッテンは欲望を滾らせる。
そうだ、あの小さな桜色の乳首が良い。ケツを犯しながらあれを食い千切ってやったら、こいつはどんな声で鳴くのだろう。

「もっと声を聞かせろ、社長」
「…ああ、もう…」
限界を超えると、ルーファウスは啜り泣くような声で言葉を紡ぎ始める。
初めてそれを聞いたとき、ミュッテンは目の眩むような快感を感じた。
「もう、何だ? …ちゃんと教えた通りに…言ってみろ」
「許し…許して…くださ…い、あぁっ、く…ぅ」
その声に、一気に頂点へ駆け上がる自分をミュッテンは感じる。
素晴らしい。
なんて悦いんだ。
おれはこの男を、神羅を征服した!
「ご褒美だ…!」
叩きつけるようにルーファウスの奥に放つ。同時に喉からも獣のような咆哮が放たれた。

絶頂の余韻が過ぎて見下ろすと、ルーファウスは意識を失ったのか身体を弛緩させていた。
まだ力を失わない己を引き出すと、精液と血が流れ出た。
それを見るだけでも興奮が甦る。
だがその興奮に任せて犯し続けたら、本当に殺してしまう。それは避けたかった。
この男にはまだ利用価値が山ほどある。
ようやく許しを請うようになった。
いつかおれをご主人様と呼ばせて靴を舐めさせるのだ。
その時こそ、おれが神羅を手に入れるときだ。

ミュッテンは昂ぶって鎮まる気配のない己を自分の手で扱き始めた。
ぐったりと床に伏しているルーファウスの窶れた顔めがけて、欲望の残滓を吐き出す。

そのぬめる滴りが白い頬を滑り落ちていっても、ルーファウスは目覚める気配すらなかった。

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